お客様ぁぁぁ?! [今を生きる]
先日家族そろってお買い物に行った時のお話です。
カミサンが物色している間、私は子供ら二人にアイスクリームを食べさせていました。
食べ終わると、下の子(3歳)がトイレに行きたいと言い出しました。
お店には普通のトイレと、身障者(兼、乳幼児)用の広いトイレがあります。
広い方には乳児用ベッドや、幼児用の小さい便器も設置されているので、空いている時はいつもそちらを使います。
その時も、ちょうど空いていたので、身障者用トイレに入りました。
トイレから出てカミサンを探していると、下の子がタオルがないと言い出しました。
いつも持ち歩いている(クサ〜くなっても放さない)汗と鼻水がしみ込んだハンドタオルです。
…思い出しました、子供が用をたしている間、トイレの棚に乗せたのは私です。
買い物をゲットしたカミサンと合流し、早速トイレに向かいました。
ところがそのトイレは「使用中」。
30分くらいトイレの前で待ったのですが、いっこうに出てくる気配はありません。
しびれを切らせて、おそるおそるノックをしてみても、まったく反応はなし。
しょうがないので、サービスカウンターに行き、訳を話しました。
こちらの意図としては「トイレが使用中なので、空いた時にタオルを見つけて連絡を下さい」とお願いするつもりだったのですが、係員は話を聞いているうちに「30分ですか…、ちょっと長過ぎますね…」とか言い出しました。
「少々お待ち下さい」
「いや…あの」
急ぎませんから、と言おうとする私たちを後に、係員はトイレに向かいました。
コンコン。
「お客様、いかがなされましたか?」
コンコン…、コンコン。
「お客様。大丈夫ですか?」
コンコン、コンコン。
ただならぬ気配に、トイレに立ち寄るお客たちが集まりだします。
「どうしたの?」
「出てこないの?」
「どうも中で誰か倒れているらしい」
「なんか脳卒中らしいよ」
野次馬の伝言ゲームに影響されて、何だか嫌な予感の私たち。
さすがに「後はお願いします」とは言えない雰囲気になってきました。
その間も係員の問いかけは続きます。
コンコン。
「お客様?…お客様?お客様ぁ?!」
コンコン…、コンコン。
「80歳くらいのおばぁさんがさぁ…」
伝言ゲームはさらにエスカレートし、中で倒れている(であろう)人の風貌にまで達しようとしています。
このトイレは、完全な個室で、天井に隙間などはありません。
係員はついに決断しました。
携帯を取り出し、同僚に連絡。
トイレの鍵を持ってくるように指示しました。
これがまた、鍵が見つからず、係員も慌てた様子。
あちこちの売り場に係員が飛び回って、ようやく鍵がトイレに到着しました。
「お客様、申し訳ありません。ドアを開けさせていただきますね」
向かいのサービスカウンターの店員さんたちも、心配そうなまなざしを投げかけてきます。
「もしものことがあるかもしれないから、子供には見せないほうが…」
カミサンと相談して、私たちはトイレの前をそっと抜け出して、ケーキ売り場前に移動。
子供たちの気をそらす作戦に出ました。
そうこうしているうちに、野次馬から「きゃぁぁぁ」という悲鳴が…。
店の外では、救急車の音がしたかと思うと、レスキュー隊員があわただしく…。
いや…。
おかしいな。
何かみょうに静かだな…。
ふと見ると、先の係員がにこやかな顔でやってきました。
「どなたもいらっしゃいませんでした」
「何かの拍子にロックがかかってしまったようです」
「はぁぁぁぁ…」
声にならない声。
あたりに漂っていた緊張が、プシュゥと音を立てました。
私ら夫婦からも、ケーキ屋の店員さんからも、向かいのサービスカウンターや、奥のレジからも。
お店の人もみんな緊張してたのね。
「これですね」
係員はハンドタオルを誇らしそうに差し出しました。
彼の額に、にじみ出た汗が、店の照明を反射して、キラキラと輝いていました。
(終わり)
最後まで読んでいただきました皆様、ありがとうございました。
なんだよぉって怒らないで下さいね。
多少ドラマチックに脚色したかも(笑)ですが、これは先日私たち家族が、本当に出くわした、まぎれもない「事件」でした。
、、、、。(笑)
ハラハラしました、、、。
しかし家でもカギなんてかからないのに、
こういうトコでかかっちゃ困りますね。
使うべき人で使えなかったことがあるかもしれませんしね。
by nal (2006-07-12 16:36)
わらってしまった、、、
オオゴトになったのに、、解ってみれば、、(* ̄m ̄)ウシシシ...
なんだかなぁ、、って事よくありそう。。
by アキオ (2006-07-12 20:57)
ど、ドラマチックな展開ですね…。
でも、エンディングが平和でホント、良かったです!
by 参明学士/PlaAri (2006-07-12 23:29)
事件・事故でなくて本当に良かったですね!
母を外出させるときは車椅子なので、このタイプのトイレはよく使います。
最後のオチでホッとしました。良かった。
それにしても、トイレのカギを探すのに手間取った点が気になります。
この出来事が教訓となって、対応策が打たれることを願っています。
あっ、それと、ハンドタオルが戻って良かったですね~(笑)
by m-kurata (2006-07-13 01:02)
nalさん
見たところ、衝撃でロックされてしまうような構造じゃなかったんですけどね。
本当に偶然なのか、それとも…考えたくありませんが、イタズラとか?
私たちが並んでいる間、一緒に並んではあきらめて他のトイレに向かった人は、何人もいました。
akioさん
私も一時はどうなることかとヒヤヒヤしました。
最後はどこかから「ちゃんちゃん」という音が聞こえたような(笑)。
参明学士さん
笑い話で終わって、良かったです。
今だから言えますが、マスコミにインタビューを受ける自分が脳裏をよぎりました。
もっといい服着てくりゃよかったな、なんて(笑)。
m-kurataさん
お店の人には悪いですが、いい緊急事態対応訓練になったと思います。
レジの人まで、顔がこわばってましたもん。
あちこちに点在する店員さんが、目と目で合図するところなど、何だかドラマを見ているようでした。
by GEN11 (2006-07-14 05:24)