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Vol.75 ハムレットのための特別席 座キューピーマジック [座キューピーマジック]

座キューピーマジック公演『Vol.75 ハムレットのための特別席』を観に行ってきました。

ここ数年はキューピーマジックプロデュースでしたが、今回からはまた劇団に戻りました。それも一般社団法人となり黒字化を目指すとのこと。さらには継続して黒字化できなければ3年後には劇団を解散する、という崖っぷちさ。
今までにも、お金がなくて幕が開かない、なんてヒヤヒヤしたことがありましたけど、座長さんのお歳もあるので、今回はかなりシビアで思いきった決定なんだな、と思います。

年2回の公演として、あと6回しかキューピーマジックの公演を観ることができないかも?ということで、今回はダブルキャストの両方を観るべく予定を組みました。少しはチケットの売り上げに貢献できるでしょうか?
泊りがけの観劇となるため、御年90歳のおばぁが家で一人きりになることが心配でしたが、ワタシの実姉が関東から留守番に来てくれるということになり、やれやれ一安心。


しかーし、とかくこの世はままならぬ。

まだ本格的な梅雨入り前だというのに、大型で強い勢力を持った台風が日本列島に急接近。梅雨前線を刺激して線状降水帯が発生。各地に甚大な被害をもたらしました。
本来なら実姉が到着してから出発する手はずだったのが、当日関東圏は在来線の運休が出て大混乱。実姉の出発は翌朝に延期となりました。
ワタシたちは車での移動になります。高速道路の通行止めが心配だったので予定どおりに出発。不本意ながら、年寄りを一晩置き去りにするということになりました。まことにもって申し訳ない。
それでも、ちょうど風雨が弱まる時間を狙ったのが功を奏して、道中は思いのほか順調でした。途中一か所冠水した道路を通る状況があったりしましたが、何とか無事に娘のアパート(キューピー観劇用前線基地)に到着できました。
その後、ネットで高速道路の状況を確認すると、かなり通行止め区間が増えてましたね。何とかセーフ。いやーかなりヤバかった。
明けて翌日。実姉からの実家到着連絡がありホッと一安心。これでようやく気兼ねなく観劇に出かけられます。

この「ハムレットのための特別席」は、再演の回数はわかりませんが、ワタシ個人の観劇としては回数の多い演目です。観劇回数が一番多いのは断然「黒いスーツのサンタクロース」で、数えてみたら合計9回でした。そしてそれに次ぐのがこの「ハムレットのための特別席」で、今回で5回目の観劇となります。
一般社団法人となり、今回を含めて今後6回の公演を予定している訳ですが、その第一発目として、劇団旗揚げ公演だった「黒いスーツのサンタクロース」ではなく、「ハムレットのための特別席」を選択したのは、それだけ思い入れの強い脚本なのでしょうね。

さてさて、いつにも増して無駄に長い前置きで恐縮です。
以下ネタバレあります。ご注意ください。



ダブルキャストの両キャスト観劇というのは、考えはしてもなかなか実行しにくいものです。経済的にもそうですが、地方に住むワタシとしては地理的なこともあって難しい。以前連休にかこつけて同じ演目を2回見たことはあったものの、ダブルキャストを両方観たことは、長いキューピー観劇人生の中でも1回もありません。
そういう意味でも今回は、エポックメイキングと言うか、画期的と言うか、前代未聞と言うか、空前絶後と言うか…なんせとてつもなく大変な試みなのです。

1回目は土曜日のマチネでキャストはBチーム。2回目は日曜日のこれまたマチネでAチームでした。
今まで別キャストを連続で観ることはなかったので、とても新鮮でしたね。それも予想よりずっと役作りの方向が違ってて、続けて観て飽きることはありませんでした。
比べてどうこう言うつもりはありませんが、全体的な印象として、Bチームは落ち着いた重厚感のある感じ、Aチームは少し若々しくて明るく観えました。上手く伝わるかわかりませんけど、昭和なBチームと令和なAチーム?そんな風に、不思議と時代が違ったような印象を受けました。他の日、他の回がどうだったのかはわかりません。おそらくそれぞれ少しずつ違うはず。よく、演劇は生き物だ、と言いますが、本当にそう感じますね。

どちらの回も大変楽しませていただきました。泣いて笑って…いや泣きながら笑って、笑いながら泣いての2時間。また明日から頑張ろう、そんな気持ちになりました。

以前の記事にも良く書きましたが、キューピーマジックの公演って泣きと笑いが唐突に入れかわるんですよね。感情をすごく揺さぶられるというか。だから観終わった後、とてもすっきりした気持ちになります。ただ単に、あー面白かった、で終わらない何かがあります。
いろんな感情を吐き出して吐き出して、吐き出しつくして、最後の最後に、ふんわりと暖かい、優しい気持ちが残る…みたいな。

いまふうに言うと、キューピーマジックはデトックスなんですかね。座長の田窪さんがよく「台詞はうんこだ」と言ってますが、観客のデトックスとも相まって、公演終了後の劇場には、大量のうんこや老廃物が積み上がっていますねきっと笑。さぞかしお掃除が大変だったことでしょう(合掌)。



前回4年前に観た『Vol.70 ハムレットのための特別席』では、どちらかと言うと父親から子供たちを見る視点で観ていたこの演目。今回は何というか、自分から自分を見る感じで観てました。

話は飛びますが、実は最近の記事にも書いたように、ワタシは定年退職を機に大学生になりました。高卒だったワタシは昔からずっと大学で勉強したいと思い続けてきました。それがある時、中学校時代の恩師に触発されたことや、コロナ禍のためほとんどの授業がオンラインで行われるので、通学のハードルが下がったこともあります。

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そんなこんなで希望に燃えて入学してからわずか2か月。最近何か違和感を感じていました。自分は理数系だと思ってきたのに。数学大好きだったのに。
オモッテタノトナニカチガウ…。
最近かなりモチベーションが下がり気味な毎日を送っていました。

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「こんなワクワクする気持ち、おとうさんにはあるっ?」

「そんなのはな、若い時には誰だって!」

「お父さんにもあったのっ?」

「そりゃもちろん」

「いつ失くしたのっ?なぜ失くしたのっ?」

うろおぼえのため、おおざっぱな意訳(汗)ですが。
くるみが圭介にたたみかけるこの場面は、この演目一番のクライマックスです。もう胸ぐらをつかまれてグワングワン揺さぶられる感じです。息を止めて我慢しないと目から涙が飛び散ってしまいそうなんです。
でもどっぷりと物語に浸かっていながらも、ワタシの頭のどこかで、若かったワタシが叫ぶ声も聞こえていました。

「数式を解く時のあのワクワク感は…」

「解き終えた後の充実感は…」

「…いつ失くしたのっ?」

いつのまにか、くるみがワタシに向かって叫んでいるような気がしました。そして、くるみが放つ言葉の一つ一つが、ワタシの心に突き刺さりました。



ほんとにね。
いつもこれだ。
もうね、なんなの?って。

キューピーマジックの公演を観に来るといつもそう。
その時その時で悩んでいること、困っていること、そんなところをピンポイントで突いてくる。舞台を観ながら、グサグサ刺されて血だらけな気持ちになることがよくある。
でも不思議と、公演が終わると、何だろう…ぽかぽかと暖かい気持ちしか残らない。なぜだ?
これがキューピーマジックのデトックス効果なのか?

帰り道に喫茶店で行う恒例の「振り返りの会」で、家族みんなからどう思った?と聞かれ、こう答えました。

「勉強しよ…」



このところ、課題から逃げてばかりのワタシ。
同じ学生仲間の息子パイセンには、偉そうなことは言えません。

「ほんと親にはカッコ良くいて欲しいよね」

娘にはダメ押しでバッサリ斬られ。
ああもう何なん?やりゃあいいんでしょやりゃあ。などと不貞腐れつつ、それでも少しは前向きになれたような気がします。
やっぱりデトックスなのか?

息子によると…。
「どの年齢層にも刺さる普遍的な内容」だそうな。諦めたり妥協したことがある人間すべてに刺さる演目だ、と。
あーグサグサ刺されて血だらけなのはワタシだけじゃなかったのね。

みなさんはいかがでしたか。

vol75.jpg


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