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Vol.59 嘘つきジェントルマン 座キューピーマジック [座キューピーマジック]

日曜日、15年ぶりの再演となる公演『Vol.59 嘘つきジェントルマン』を観に行ってきました。
楽日の楽ステです。

前回公演も家族4人で行ったのですが、チケット代、交通費、食費、土産代もろもろで、10万円近くかかっちゃうんですよねー。まぁネズミの国とかよりはましですが。
そんなこんなで、今回はクルマで行くことにしました。
それなら、マチネでもソワレでもオッケー。
観劇中、終電を気にしながらヒヤヒヤする必要もありません。

ところで、地方に住む身としては土日に行くしかないわけですが、土曜日は息子が運動会で娘は部活。
日曜日は運動会予備日となっているので、土曜日に雨が降ればキューピーマジック観劇はアウトとなります。
臨機応変、行き当たりばったり、綱渡り的日程なので、チケットは当日券が頼りです。
いつもチケット当日取り置きしてもらってるので、それは何とかなるだろうとふんでました。

さてさて待ちに待ったその土曜日。
その日はピーカンの晴天に恵まれ、運動会は予定通りに開催されました。
したがって、キューピー観劇は日曜日にと確定したのでした。
やたっ!

劇団にマチネの取り置きをメールでお願いし、迎えた日曜日。
前日の運動会と夕方の草刈りで疲れた身体を無理やり布団から引っぱがし、子供らをたたき起こし、朝早く出発しました。
ところが、途中コンビニで朝ごはんを買い込んでいるところに座長さんからメールが…。
マチネは座席数分のチケットがすでに売れており、キャンセル待ちするしかないとのこと。
ソワレなら取り置きできるということで、急遽予定変更。
いったんまた家に帰り、出直すことにしました。
(時間が空いたので午前中はまた草刈りの続き。日中の草刈りは暑いです…)

さて予定は少し押し気味で、お昼過ぎにいよいよ出発。
目的地は本多パーキングに設定。劇場はすぐ目の前です。
高速道路や都内もそれほど渋滞もせずに行程は順調…と思ったら。
ナビを頼りに下北沢に突入したところ、超狭い路地を案内され四苦八苦。
そうです。あの人ごみと狭い道をぜんぜん考慮してませんでした。 orz

でもすごいです。
クルマを進めていて、あ、この先やばそうだな。あの自転車じゃまになりそう…。と思ったその瞬間!
近くを歩いていた歩行者が、サッとその自転車をピンポイントで移動してくれるんです。まるでワタシの心を読んでいるかのようにっ。
あ、あの店の看板。ちょっと通れないな…と目をやるだけで、近くを歩いている人が、フツーにその看板をどけてくれるんです。
それも皆さん二十代前半の若者ばかりなんですよ。
フロントウィンドウ越しに繰り広げられる信じられないような光景の数々。
まるで、スタッフが先回りをして待ち構えている「はじめてのおつかい」のよう。
あ…ありがとうございます。お手数かけて申し訳ありません。田舎モノなんで許してください。
つうか、皆さんいったい何者ですか?なぜにワタシの心を読めるのですか?
これもキューピーマジックなんでしょうか、それとも下北沢マジック?
いや、それだけワタシが困った顔をしてたのかもしれませんね。

おかげさまで、開場5分後くらいには劇場入りすることができました。
この日、ワタシを劇場まで導いてくださった数多くの方々、本当にありがとうございました。
クルマに傷一つつかず、気分良くキューピーマジックの観劇ができたのも、ひとえにあなた方のおかげです。そしてこの素晴らしい若者を生んで育ててくれたご両親、はぐくんでくれた環境やご友人にも感謝。いくら感謝しても足りません(合掌)。
次回はこんなことのないように、クルマはもっと大通りのパーキングに停めて、歩いて行きます。

さてさて、またまた長い前置きになってしまいました。
以下、ネタバレあります。ご注意ください。





実はこの演目。15年前の初演『Vol.26 嘘つきジェントルマン』を観てるんですよね。それも2回も。
20年以上もキューピーマジックを観てて、続けて2回観た演目ってこれくらいしかないかもしれません。
それくらい面白くて大好きな演目でした。
DMによると、今回は大幅にリライトしたということで、どんな脚本になっているのか興味津々でした。
Aキャストで久しぶりの岡野佐多子さんを観たかったんですが、チケットの関係で残念でした。というかダブルキャスト両方観たかったです。



初演の劇中劇は「リア王」あり「金色夜叉」あり。和洋折衷でてんこ盛り。
かなり座長役の力量に左右される脚本でしたが、今回は基本「和風ヴェニスの商人」でしたね。
劇中劇の幕も短くかなり簡略化されていて、前回みたいに濃くていっぱいいっぱいになることはありませんでした。まぁそれで最後のオチが際立つとも言えるんですが。
衣装もこてこての時代劇ではなく、着物アレンジがとても素敵でしたし、今の時代と役者に合った、良い芝居だったと思います。
個人的にはシェイクスピアは嫌いなんですが、今の若者に「金色夜叉」はないでしょうから、妥当なところなのでしょうか。

また初演から大きく変わった部分として、奥さん側が浮気しているという設定になってました。
確かにキャラクター的には今回の設定のほうがリアリティありますね。
奥さんの浮気を薄々知りつつ強く言い出せない主人公。
ただ、何でそこまで卑屈になるのか。過去に何か後ろめたいことでもあったのか。
そのあたりの説明がなかったので、その部分はちょっと不完全燃焼気味でした。

それにしてもこの脚本、大好きです。
再演してくれてありがとうございますって感じです。
初めて観た人が最後の暗転明けでポカンとしてしまうところを考えるだけで、ワタシまで思わずガッツポーズをしてしまいそうです。





家族のために、と思って大事にしてきたこと、頑張ってきたことが、家族のほうから見るとそうではなかった。
本当に大切にしなければいけないものは何なのか。
本当に頑張るべきこととは何なのか。

お金、家、家具、職、地位、そういったものをすべて無くして、娘だけが残った主人公。そして逆に、その愛する娘から離れることになってしまった奥さん。
この対比はすごいですね。この落差には愕然とします。
しかもどちらも、自分の本当に大切なものが娘であったと、最後に気づく。
お金があっても、仕事があっても、自分を愛してくれる人がいても、子供以上の価値はないんですよね。
それでも歯を食いしばって立ち上がろうとする奥さんの気持ちを思うと、心が震えました。

長く生きていると、会社や地域での立場とか欲とか、そんないろんなしがらみが、気づかないうちに増えてきて、本当に大切なもの、大切にしなければいけなかったものが、見えなくなってしまいますね。
他人事ではない、芝居の中だけではない、ワタシ自身もそうなる…そうなっていることを、常に自覚していなければ、と改めて胸に刻みました。

最前列奥に陣取ったワタシの目の前には積み木のお城。
舞台とは何も関わらない、さり気ない簡単な置き物でしたが、とても効果的で象徴的なセットでした。
主催者のきめ細かな気配りを感じ、さすがキューピーマジックだと嬉しくなりました。

最後に「きもい」で切り捨てられちゃった(笑)けど、本当に大切な、守るべきものだけが残った主人公。彼はこれから強くなれるでしょうね。
そうなりゃ奥さんが帰ってきてもうまくいくんじゃないかなーなんて淡い期待も持ったりするんですが、奥さんのキャラクター的にそれはないのかな。
その辺でちょっとビターな後味でした。

皆さんはいかがでしたか?
image.jpg

帰りはiPhoneでルートを検索。
できるだけ広めな道を選んで帰りました。
クルマのナビよりスマホの地図アプリのほうがよほど使える、ということが証明されるという、何とも笑えないお話。
これまたマジックな一日でした。


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GEN11

アキオさん
そっとnice!をありがとうございます。

by GEN11 (2013-05-31 12:23) 

田窪一世

今回もご家族お揃いで遠路はるばるありがとうございました。
桑原さんご一家の他にも何組か、
わざわざ遠方からお越しいただいているお客様がいらっしゃいます。
それだけの労力と金銭をご負担いただいて、
果たしてそれに見合っただけの舞台をお見せ出来ているのかどうか、
とても不安ですが身の引き締まる思いです。

感想文読ませていただきました。
いつもながらツボに効く内容で腑にズシリと落ちて来ます。
戯曲を執筆するとき、いつも頭をよぎる曲の歌詞の一節があります。
それは、さだまさしさんの「風に立つライオン」で、
少し長いのですが引用させてください。


風に立つライオン
作詞、作曲、さだまさし

突然の手紙には驚いたけど嬉しかった
何より君が僕を怨んでいなかったということが
これから此処で過ごす僕の毎日の大切な
よりどころになります ありがとう ありがとう

ナイロビで迎える三度目の四月が来て今更
千鳥ヶ渕で昔君と見た夜桜が恋しくて
故郷(ふるさと)ではなく東京の桜が恋しいということが
自分でもおかしい位です おかしい位です

三年の間あちらこちらを廻り
その感動を君と分けたいと思ったことが沢山ありました

ビクトリア湖の朝焼け 100万羽のフラミンゴが
一斉に翔び発つ時 暗くなる空や
キリマンジャロの白い雪 草原の象のシルエット
何より僕の患者たちの 瞳の美しさ

この偉大な自然の中で病と向かい合えば
神様について ヒトについて 考えるものですね
やはり僕たちの国は残念だけれど何か
大切な処で道を間違えたようですね

去年のクリスマスは国境近くの村で過ごしました
こんな処にもサンタクロースはやって来ます
去年は僕でした
闇の中ではじける彼等の祈りと激しいリズム
南十字星 満天の星 そして天の川

診療所に集まる人々は病気だけれど
少なくとも心は僕より健康なのですよ
僕はやはり来てよかったと思っています
辛くないと言えば嘘になるけど しあわせです

あなたや日本を捨てた訳ではなく
僕は「現在(いま)」を生きることに思い上がりたくないのです

空を切り裂いて落下する滝のように
僕はよどみない生命(いのち)を生きたい
キリマンジャロの白い雪 それを支える紺碧の空
僕は風に向かって立つライオンでありたい

くれぐれも皆さんによろしく伝えて下さい
最后になりましたが あなたの幸福を
心から遠くから いつも祈っています

おめでとう さよなら


大好きな歌ですが、この中の、
「やはり僕たちの国は残念だけれど何か
大切な処で道を間違えたようですね」
という一節が、最初に聞いたとき以来ずっと、
僕の心にこびりついて離れません。
僕の作品のほとんどは、
この一節がテーマだと言っても過言ではないように思います。
そして、そこを適確に発見してくださる、
桑原さんのご感想にはいつも脱帽です。
そう、そこ、そこが言いたかったんですよ、
といった感じです。
桑原さんのようなお客様がいらっしゃる限り、
僕は舞台を続けて行くことが出来ます。
いつも勇気をありがとうございます。
そして、これからもよろしくお願いします。
精進します。
by 田窪一世 (2013-06-08 19:38) 

GEN11

田窪さん、コメントありがとうございます。
確かに今の日本を見ていると、いつからこんなふうになってしまったんだろう、と思う事もあります。
でも、キューピーの舞台を見に来てくれる人がこんなに多くいるということは、日本もまだまだそれほど捨てたもんじゃないのかな〜とも思っています。
これからも素敵な公演をたくさん観せてください。日本の未来のためにも!(笑)
by GEN11 (2013-06-15 16:48) 

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