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Vol.76 黒いスーツのサンタクロース 座キューピーマジック [座キューピーマジック]

先日いつもの座キューピーマジック公演『Vol.76 黒いスーツのサンタクロース』を観に行ってきました。
いつもの、とは書きましたが、地方に住むワタシとしては「出かけたついでにちょっと芝居を観てみる」なんて感じではないんですよね。芝居を観るために綿密なスケジュールを立て、あちこちに布石を打つことが必要になります。もう芝居を観ることを中心にすべてを考えて準備していくわけです。

そしてこの季節はいつも降雪の問題があります。
昔は大体11月の半ばを過ぎると、いつ雪が降り始めてもおかしくありませんでした。ひどい時は正月前に2回も屋根の雪下ろしをすることさえありました。最近は温暖化の影響もあってか、そこまで早く降り始めることはなくなりましたが、その代わりにか、降る時は一気にドカ雪になります。
とまあそんな感じですが、予報によると楽日となる日曜日には大雪の情報が。観劇の帰りはかなりの気構えが必要です。

さらに問題がもう一つ。
御年満89歳のうちのおばぁです。最近特に(痴呆的に)怪しくなってきたので、何日も一人で置いておくわけにはいきません。そこで前回も使った手ですが、関東在住の実姉に留守番というかおばぁの付き添いをお願いしました。

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今回は台風も大雪もないので、実姉の移動もスムーズ。実姉が自宅に到着してから出発することができました。
そして、ここまでして折角の上京なので、来年から一人暮らしの息子くんのアパート探しも兼ねようということになりました。さすがに今から契約するのは早すぎるので、大体の場所(最寄駅)とか町並みとか周りの環境とかをざっくり観て歩くことにしました。実際のアパートは来年に入ってから絞り込んでいきます。

さてさて、そうこうしてようやく準備万端整ったキューピー観劇です。予定どおりにコトは進み、今回も前回に引き続き、2日間をかけてダブルキャストの両公演を観ることができました。

またまた長い前置きで恐縮です。
以下、ネタバレありますのでご注意ください。



さてこの『黒いスーツのサンタクロース』という演目は、キューピーマジックの旗揚げ公演だったこともあり、最も上演回数の多い演目となっています。実際ワタシの観劇回数も最多となる演目です。とは言え、同演目で直近の上演は今からもう5年前。いやー月日が経つのは早いもんです。

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ほんと5年なんてあっという間ですね。
まだあの頃は役職定年過ぎたのに役職を返上させてもらえなくてモヤモヤしていた頃でしたが、今や何とか定年を迎えることができて、長年夢だった大学生になっています。課題に追い詰められる毎日ではありますが。

ま、それは置いといて。
今までの『黒サンタ』の観劇回数を数えると、なんと9回も観てました。当然最多観劇演目であります。だから入場して椅子に座って舞台の配置を見ただけでそれぞれの役者の動線が見える(笑)くらいです。
それくらいもう観尽くした演目なわけですが、じゃあもういい加減飽きたかと言われると、いや違う違うそうじゃない。毎回毎回新しい発見があるのが、キューピーマジックのマジックたる所以なのです。これだからキューピーの分析はやめられない止まらないのです。


今回特に今までと違う印象を受けたのは、物語の流れにメリハリがあって明暗と言うか陰と陽がはっきりと感じたところでした。冒頭から稽古場のくだりまでは非常にコミカルでテンポの良い流れだったのが、由紀子の台詞にシンクロした真理子の「後悔したくないの」から一転して重く暗く不穏な流れに変わっていくところ。物語の流れにギューッと急ブレーキがかかったかのようなあの感じは、観ていてドキッとしましたね。
AキャストBキャストどちらでも感じられたので、多分意図的な演出だったんだろうなと思います。


好きなシーンは沢山あります。
稽古場で由紀子と雄二のぎこちない会話にチャチャを入れる死神に、由紀子が蹴りを入れるところは可愛くて笑いました。由起子と死神がお互いに気を許している感じが出ててとっても良かったですね。

あとワタシが大好きな友則のシーンには、いつも胸を熱くさせられますね。笑いと涙を交互に畳み掛けられる、キューピーマジックお得意の演出が気持ちいいです。AキャストBキャストそれぞれの友則を感じられてそれもとっても良かったです。観劇後に家族で行った振り返りの会(笑)でも友則が話題でした。

大好きなお姉ちゃんの出演作は87作じゃなく88作だったと怒る友則。良かったのは2作だけじゃなくてみんな良かったと、烈火の如く怒る友則。でも「お姉ちゃん死んじゃうの?」に答えた死神の「ええ…寿命なんです」にはまったく動じない。スッと受け入れています。この辺りの対比も素晴らしいです。一番状況を理解できているのは友則なんですよね。感情表現が乏しいと言うより、感情以外の表現が乏しいといった感じなんでしょうか。


死神が5年前に遡って由紀子に会いに行った病院前。そこではもう死神は喋れません。うまく言葉が出せない死神は癇癪を起こしたようになるのですが、由紀子はそこで優しく「そんなに怒らないで」って言うんですよね。
「何?」とか「どうしたの?」ではなく「怒らないで」って言うんです。死神が言いたいことを伝えられなくて怒っていることをきちんと認識できている。そして慌てず落ち着いて真正面から聞こうとする。それは昔から友則と一緒にいたからだと思うんですよね。そのシーンに、子供の時からずっと友則に向けられていた由紀子の優しさが感じられて、さらに胸が温かくなりました。これは一緒に観た娘も同様に感じたそうで、振り返りの会で二人で盛り上がりました。

あと同じ場で、由紀子が印籠をもらい、その中に勇気が入っているのだと気づく瞬間。その前後の由紀子の表情の変化がたまらなく素敵でした。まるで微かにスポットが入ったかのように見えました。いやもし実際にスポットを当てたのなら照明さんGJ!
この公演、そんなところがいくつもありました。台詞のない登場人物の表情であったり動きであったり、それぞれの個性がすごく緻密に演じられていてとってもリアルだったんですよね。だからメインでしゃべっている人だけでなく、周りの人たちや舞台全体に目を向けなくちゃいけなくて、観てる方はホント大変でした(笑)。

それからそれから。
夢の中やこの世でないシーンで、台詞にエコーがかかってましたね。最初、えっ?ピンマイク付けてる?って思って、目を凝らして見てみましたがどうもそうじゃないようで。おーっ音響卓から台詞を拾ってるんだ!凄い!リアルタイムでエコーかけてる!って一人で大興奮していました。振り返りの会で聞いたらみんなも気づいてたみたいです。
いや、キューピーマジックでそういうエフェクトを使うってことに新しさを感じたというのもそうですが、そのエコーが凄くシーンにマッチしていて、とても効果的だったということに感激したのです。音効さんもGJ!


そのほかにもピンポイントで書きたいことが山ほどあるのですが、今回は自分が自分自身に一番驚いたことがありました。以前から『黒サンタ』について何度も書いてきたこと。なぜ死神が由紀子にあれほどまでに尽くしたのか?という一点です。今までのワタシの解釈では、女優である由紀子に役者だった自分を重ねているから、ということでした。そんなふうにずっと言ってきました。

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過去記事を遡っていくと4回目の観劇でそう結論づけたようですね。
しかしところがばってん、今回の公演でその気持ちは180度変わりました。やはり死神は由起子が好きだったのだ、と思えるようになりました。具体的に何が、というと言葉にはできないのですが。何だか今回の公演を観ていたら、あぁ人間って理屈じゃないよな、思ってるよりももっと単純なのかもな、と思えてきたんです。
四半世紀もこの演目を見続けてきてようやくかよ!とか言われそうですね。まったくもって面目ありません。もしかするとこれが最後かもしれない『黒サンタ』。回り回って最後にたどり着いた結論に、自分自身が驚いたのと同時に納得した公演でした。


そういえば、パンフレットに今回の公演は昭和っぽさをそのまま残したって書いてありました。ということは、アレが復活するのかなーって開演前は期待してましたが、結局ありませんでしたね。

「コードレスぅ〜」

個人的には大好きなシーンだったので残念です。まぁ令和の昭和らしさとはちょっと違うエピソードだったんでしょうね。
皆さんはいかがでしたか?

vol76.jpg

明日はいよいよクリスマスイヴ。
もしもドアチャイムが鳴ったら、とっておきの笑顔で出迎えてあげてください。
それではまた。メリークリスマス!良いお年を!


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