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はじめてのおつかい [時事ネタ]

またまた、小惑星探査機「はやぶさ」のお話です。

そもそも探査機を地球に帰すっていう発想がすごいです。
ミッション完了後は宇宙空間を永遠に漂い続けたり、探査対象におきっぱなし、というのが通常。
日本にとっても、世界にとっても、はじめてなんですね。

「はじめてのおつかい」
いつ見てもハラハラドキドキするものです。
今回の「はやぶさ」のミッションはまさに「はじめてのおつかい」と言えます。
現在の「はやぶさ」は正に満身創痍、それ以上の状況です。
よく生きて帰ってきた。そんな感じなのです。



2003年5月9日
 鹿児島・内之浦宇宙空間観測所からM-Vロケットにより打ち上げられる。
 イオンエンジンの長時間連続運用は世界初。
2004年5月19日
 地球スウィングバイを高精度に実施。
 一年かけて地球を追いかけてきたはやぶさは、ここで地球を追い越し、一路イトカワへ。
2005年7月31日
 XYZ軸用と、3基あるリアクションホイール(姿勢制御装置)のうち、X軸用が故障。
 これは想定内のため、残り2基の姿勢制御に切り替え。
2005年9月12日
 イトカワ上空20kmに到着。化学スラスタ(化学推進器)噴射により減速停止。
 ここまで航行距離約20億km。
2005年9月30日
 イトカワ上空7kmまで降下。
2005年10月2日
 Y軸用リアクションホイール故障。
 以後姿勢制御は、残り1軸のリアクションホイールと化学スラスタの併用運用。
2005年11月4日
 第1回目の着陸リハーサル。
 700mまで降下したが自律航法機能の異常のためリハーサル中止。
 複数の岩石を個々の着陸対象と判断し処理能力が超えたため。
2005年11月9日
 第2回目の着陸リハーサルを2回行う。高度70mまで近づく。
 1個目のターゲットマーカー(着陸用の目印)を放出、成功。
2005年11月12日
 第3回目の着陸リハーサル。高度55m。
 探査ロボット「ミネルバ」分離するが、イトカワ着地に失敗し行方不明となる。
2005年11月19日
 第1回目着陸シーケンス。
 高度40mで2個目のターゲットマーカー放出成功。
 自律航法で順調に降下するが、高度10mあたりから高度データに異常発生。
 現状が把握できないため、30分後に強制的に推進剤を噴射し上昇。
 後の分析:
  降下中にセンサが反応したため降下を中止し上昇を始めた。
  しかし姿勢不良のためそれも危険と判断して上昇も中止。
  自由落下で2回ほど地表にバウンドした後、地表にとどまっていた。
 サンプル採取は失敗したが、月以外の天体からの離陸は世界初となる。
2005年11月26日
 第2回目着陸シーケンス。
 着地成功。サンプル採取のための弾丸発射。
 しかし上昇時に燃料漏れのため姿勢不良を起こす。
2005年11月27日 
 漏洩燃料の気化による温度低下のためバッテリーが放電。
2005年11月28日
 通信不能。
2005年11月29日
 ビーコン回線の回復。
2005年12月2日
 化学スラスタの再起動。本格的に始動せず。
2005年12月3日
 イオンエンジンに使用するキセノンガスを中和剤噴射ノズルから噴射し、姿勢制御に利用する運用を決定。
 制御ソフトウェアの開発を開始。
2005年12月4日
 姿勢制御ソフトウェアが完成し転送。姿勢制御成功。
2005年12月5日
 通信状態が回復し、サンプルが採取できていない可能性が高いことが判明。
2005年12月8日
 再度燃料漏れが発生。
 姿勢制御できなくなる。
2005年12月9日
 通信途絶。
2006年1月23日
 3ヶ月ぶりにビーコンを受信。
 姿勢制御不能となった時でも最終的に単純なスピン状態に落ち着くような重心設計になっていた。
 それでも運用チームはこれほど早く通信が回復するとは思っていなかった。
2006年1月26日
 リチウムイオンバッテリーが完全に放電していることが判明。
 化学スラスタも燃料だけでなく酸化剤も漏洩し、すべて使用不可。
 イオンエンジン用キセノンガスの噴射で太陽電池パドルを太陽に向ける姿勢制御ソフトウェアの開発。
2006年2月6日
 低速度な通信を使って制御ソフトウェアを転送し、姿勢変更を開始。
2006年3月6日
 通信状態も回復し正確な位置を把握。
2006年3月〜4月
 機内に漏洩した揮発性ガスの排出を行う。
2006年5月31日
 イオンエンジン2基の起動試験に成功。
2006年7月
 キセノンガスの消費を減らすため、太陽光圧も姿勢制御に併用するソフトウェアを開発し運用開始。
 太陽光圧を姿勢制御に利用するのは、後に打ち上げられる実証衛星「イカロス」に先立った実運用となった。
2006年7月〜9月
 リチウムイオンバッテリーの再充電開始。
 過放電したリチウムイオンバッテリーはそのまま充電すると爆発の危険性がある。
 生きているセルのみに何千何万回と短時間の充電を行う方法を取る。
2007年1月17日〜18日
 充電したバッテリーを使用し、試料採取容器を地球帰還カプセルに搬送、収納して、外蓋を閉める。
2007年4月25日
 イオンエンジン2基(エンジンB、D)起動。
 イトカワ軌道を離脱し、地球への帰還を開始。
2007年7月28日
 もう1基のイオンエンジン(エンジンC)再起動。
 イオンエンジンの消耗を防ぐため、以降はイオンエンジンCのみの運転とする。
2009年2月4日
 リアクションホイール再起動成功。
 イオンエンジンD再点火。
2009年8月13日
 メモリエラーが発生するも航行には支障なし。
2009年11月4日
 中和器の劣化によりイオンエンジンDが停止。
 地球帰還に必要な推力が不足することが判明した。
2009年11月20日
 イオンエンジンBのイオン源とイオンエンジンAの中和器で、合わせて1基のエンジンとして運用。
 設計の最終段階で、念のためにと導入した電子回路で実行可能な運用方法だった。
2010年6月13日(予定)
 はやぶさ地球帰還。
 高度20万kmで地球帰還カプセルを分離。
 カプセルは秒速12kmで大気圏に突入し、オーストラリアのウーメラ砂漠へ帰還。
 探査機も大気圏に突入。
 惑星再突入シミュレーションを行い、今後の宇宙開発に必要なデータを収集。
 自身は大気との摩擦熱により燃え尽きる。
 全航行距離60億km。



こうやって拾い上げてみると、まさしく波瀾万丈、まさしく満身創痍。
改めて運用チームのリカバリーの努力、熱意に感心します。
最初のリアクションホイール2基故障の時点ですでに運用想定外。
通常ならあきらめるところですが、これはもう執念ですかね。

ISS等に日本がかける予算は数十億ですが、「はやぶさ」プロジェクトはたかだか5,000万円。
6/15修正:
 ISSの日本負担分は6,000億以上でした。
 また予算5,000万円は「はやぶさ2」でしたね(そこからさらに削られて今は3,000万円ですが)。
 「はやぶさ」の予算(開発費)は127億だそうです。
それでもすでに非常に大きな成果を上げています。
これだけの低予算でも期待以上の成果を上げられることが実証されたため、米国NASAでは予算の削減が検討されてしまう事態になっているようです。

久しぶりに胸を熱くした日本の宇宙開発。
ここまで来たらもう最後の最後まで何とか成功してほしい。
でもたとえサンプルが採取されていなかったとしても、このプロジェクトは成功だったと、世界中の誰もが思うことでしょう。
これはもう奇跡です。
P-043-0008-18111.JPG

はやぶさ関連記事:
 2010/04/16 「3年遅れのただいま
 2010/05/31 「大迫力っ 全天周映像


HAYABUSA -BACK TO THE EARTH- - 酒井義久
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コメント 4

アキオ

更新されてから、この時間にレスするのも、
あるいみ、時、空の巡り合わせですよね。
by アキオ (2010-06-05 11:54) 

GEN11

アキオさん
すばらしいタイミングでコメントをありがとうございます。
もしかして行動パターンが読まれてます?

あんぱんち〜さん
そっとnice!をありがとうございます。

by GEN11 (2010-06-07 12:24) 

アキオ

いや、偶然と言う名の、必然ですよ。。



とかいってみるーw
by アキオ (2010-06-11 18:18) 

GEN11

アキオさん
いよいよ今晩ですね。
カプセルが無事に分離出来たらもう完璧です。

by GEN11 (2010-06-13 06:22) 

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