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亡くしてみて初めてわかること [今を生きる]

今までの記事にもいくつか前振りはあったのですが。
先日親父が亡くなりました。
今年2度目の入院が最後になりました。



2週間も病院に泊り込むのはキツイですね。
一番キツイ時は、病院から直接会社へ出勤して、日中は業務を行い、終業後はいったん家に帰りシャワーを浴びて、それから病院に戻る、そんな生活でした。
さすがに途中は交代してもらったりもしましたが。
そんな生活もようやく終わりを告げ、家と会社を往復するだけの日常に戻りました。

親父はいわゆるソトヅラが良く、内弁慶で、家族にとってはあまり出来た人間ではありませんでした。
そのためワタシは小さい頃からずっと、父親を反面教師としてきた部分がありました。
ところが思いがけず長期間にわたって、意識不明の親父と寝起きを共にすることになり、いろいろと気持ちに変化がありました。

病院の夜は早いので、昔のことをいろいろ考えるのです。
不思議なもんで、思い出すこと思い出すこと、みんな良い事ばっかりなんですよね。
どうしてなんでしょうか。



ワタシが小学校に上がる前。
その頃は冬になると親父は出稼ぎにいっていたんです。
今思うと笑えますが、そんな時代だったんだなーってびっくりします。
で、ある年の暮れ。
帰ってきた親父がお土産を買ってきたんです。
40cm近くあるでっかい黄色いブルドーザーのおもちゃでした。
あれは、すっごい嬉しかった。今でも思い出すとその時の嬉しさが、当時のままによみがえってきます。
確か電池で動くんだったと思いますが、当時は電池を買うお金もありませんから、ずっと手で押して遊んでたような気がします。



出稼ぎするくらいなので、家はかなり貧乏でした。
食べ物にも結構困っていたと思います。
忘れられないのが、味付け海苔。
一袋5枚くらい入った短冊状の味付け海苔。
いつも1袋を姉と分けて食べさせられてました。
それも1枚をご飯に巻きつけて1口で食べると怒られました。
そうそう、筋子をそのまま口に入れても怒られましたね。
「ご飯にまぶして食べろ。もったいない」とよく言われたもんです。
おかずはちょっとずつかじりながら食べろと言われたワタシが、「そんなんだったらいらないっ!」って怒ったことは、今は私と母の笑い話です。
ワタシが大人になってから母は「あの時は本当にドキッとした。貧乏だったとはいえ言い過ぎたと思った」とポツリと言ってました。

食べ物の恨みは恐ろしいもので、ネタは尽きません。



そんな貧乏な中でも、本だけは良く買ってくれました。
小学生のうちは「○年の科学」を6年間。
前にも記事に書いたように「中○コース」を3年間。
毎月毎月ずっと買ってくれてました。
月刊誌のほかにもいろんな本を買ってもらってて、その中で一番のお気に入りが「飛行機のしくみ」(だったかな…)というハードカバーのマンガの本でした。
バルサ材で作るゴム動力飛行機の作り方を追いながら、本物の飛行機について説明していくという、子供にとっても非常にわかりやすい本でした。
社会人になって探したときはもう家には見当たらなくて、ネットでも探したんですが見つけられませんでした。
古本で良いのでどこかありませんかね。子供に読ませたいな。
それはそうと、本にかかる費用は今から考えると結構な出費だったとは思いますが、親父は黙って買ってくれてましたね。
さすがにワタシも家が貧乏だということは認識していたので、漫画雑誌までは欲しがりませんでしたケド。



それから、ワタシが東京に就職を決めた時。
長男は家を継ぐ、という古い考えがまだまだ一般的だった当時、長男を都会に出すことに、周りからはいろいろと言われることもあったでしょう。
でもその時にも、その後にも、反対や恨みがましいことを聞いた覚えがまったくありません。
黙って東京に送り出してくれた。この1点についてだけとっても、いくら感謝しても、し足りません。

最終的には実家に帰ってくることになりはしましたが、その8年間の生活は今のワタシを形成する重要な部分、とりわけ社会人としての気構え、身の振り方、立ち位置、そういったものがすべてそこで培われたといっても過言ではないでしょう。
良い意味で人生の勉強をする場所と時間をもらった、改めて考えるとそんな風に感じます。





逝去後バタバタと慌ただしく葬儀なんかがあったわけですが。
(他人事みたいに書いてますが一応喪主です)
何かあの空気感。どこか何かであったなー、なんて既視感を感じてました。

よくよく考えて、ハタと気づきました。
キューピーマジックの講演、「想い出のテラス」なんですよ。
あの幕開けしょっぱな、そしてエンディングのあの感じ。
線香の匂いと寝不足で迎える朝日の眩しさ。
悲しみと寂しさと、不安と緊張、そしてなぜか、いくらかの爽やかさ、清々しさ。

…やられたよ。orz
またキューピーマジックに先手を打たれたった(意味不明)。
なんでワタシの人生に先回りをするかなー(さらに意味不明)。
ワタシのほうはまだ家族そろっているので、「そして誰もいなくなった…か」とは言えませんケド。

朝早く起きてきて茶の間の障子を開ける瞬間、とか、ふとトイレの前に親父のスリッパを探す時、とか、家に帰って玄関を開けた時の線香の匂いとか。
「そうか。もう居ないんだよな…」と思う時のあの感じが、キューピーマジックの「想い出のテラス」で感じた空気感にとても近いんですよ。
葬儀の時からずっと、どことなくキューピーマジック公演の感覚が抜けず、ほんのり暖かい優しい気持ちで葬儀を進めることができました。

滞りなく葬儀も終わり。
親父にも感謝。キューピーマジックにも感謝です。



病室の写真でも載せたいのですが、不快に思う方もいるかもしれませんので、病室の窓から見えていた景色を載せておきます。
写真を見るだけでもあの時感じた空気感がしっかりとよみがえります。
ちょうど稲刈りが終わったばかり。
まだ冬の足音が聞こえてこない、ポカポカと暖かく、ちょうど良い季節でした。
これがワタシの想い出のテラスから見えた景色です。

IMG_0596.jpg



関連記事:
 2014/06/04 『Vol.61 想い出のテラス


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