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つまさきはトウでしょ [車]

YouTubeでもTVでもよく聞くのですが、イマイチ違和感。
主にモータースポーツで使われる運転技術にこういうものがあります。

「ヒールアンドトウ」

踵とつま先。そのまんまw。
操作的には、つま先でブレーキを踏みながら、踵でアクセルを踏む、というものです。ペダルレイアウトや運転者のクセによっては、つま先の親指側でブレーキ、土踏まず外側でアクセル操作の場合もありますが、同じ呼び方をします。

エスだとペダル間が狭いので、ブレーキもアクセルもつま先になってしまいますね。これもトウアンドトウ(笑)とは言わず、ヒールアンドトウなんでしょう、いちおう。

IMG_7527.JPG

それはそうと、YouTubeなどで「ヒールアンドトウ」を「ヒールアンドトゥ」って言う人が多くて、すごく違和感を感じるんですよね。結構有名なモータージャーナリストですらそうなんです。Heel and To…はぁ???
ワタシはネイティブではないので間違っているかもしれませんが、つま先「Toe」って日本語的な発音では一般的には「トウ」じゃないでしょうか。トウシューズとかって言いますよね。せめて「トー」とか。
したがって、「Heel and Toe」の発音としては「ヒールアンドトウ」か「ヒールアンドトー」が正しい、とワタシは思っています。(個人の感想です)

dance_toeshoes.png
(いらすとや)


はいおしまい。



…だとあまりに短かすぎるので、この際もう少し引っ張ります。

なぜ、ブレーキとアクセルを同時に操作する必要があるのか。不思議に思うかたもいるかもしれないので、それを書いておきます。
これはちょっと話が長くなりますよー。まず。車の構造を説明するところから始まりますからね(笑)。


自動車の基本的な駆動系の機構としては、エンジンと変速機をクラッチがつないでいる構造です。クラッチをつないだり切ったりすることで、エンジンの回転を変速機に伝えたり伝えなくしたりするわけです。そのクラッチ操作と変速機操作を人間が行うものを、一般的にマニュアルトランスミッション(MT)と呼んでいます。
超単純に描くとこんな感じ。

クラッチ構造.png

(元画像はこちら)


変速機を操作(シフトチェンジ)する時にはクラッチを踏むわけですが、それはエンジンから変速機への回転の伝達を切り離すためです。でもクラッチを切っても変速機のクラッチ側(入力側)の軸は惰性で回っています。変速機の車軸側(出力側)はタイヤがつながっていますのでこちらも回っています。そのため、違うギアに切り替えようとすると「回転差のある歯車をかみ合わせる」ことになります。

変速機の理屈では、同じエンジン回転数でも、高いギアに切り替えるとタイヤの回転数は早くなります。だから車の速度は上がる。逆に言うと、同じタイヤの回転数(同じ走行速度)で高いギアにすると、エンジン回転数(クラッチ側の軸の回転数)は低くなりますよね。

それを念頭に置きつつ、シフトアップを行う場合を考えます。クラッチを切っていると、変速機のクラッチ側の軸は惰性で回っているだけなので、ほおっておけば回転数は下がってきます。そのため、高いギアへの切り替えの場合は、ある程度歯車はかみ合いやすいのです。

問題はシフトダウンの場合です。
かみ合う歯車の回転を合わせるためには、入力側の回転を上げなければいけませんが、クラッチを切っていると、入力側の回転数は下がる一方なので、どんどんかみ合いづらくなるわけです。

実際には、歯車をかみ合いやすくしてくれる「シンクロ」と呼ばれる機構があるので、そのまま普通にシフトダウンは可能です。しかし旧車などではシンクロ機構がついていなかったり、機構は付いていても効果が弱かったりします。そのような車では、無理にシフトダウンしようとすると、ギア鳴りを起こして、最悪は歯車の歯が欠けるといった、変速機の故障につながります。
また、シンクロの機能を使っても、ある程度の時間的ロスは避けられず、コンマ何秒を競うレースなどでは良い解決策にはなりません。

そこでどうするか。
シンクロ機構が存在しなかった時から使われていた、シフトダウンのテクニックが活躍します。

①クラッチを切る
  ↓
②高いギアを抜き、ニュートラルにする
  ↓
③クラッチをつなぐ
  ↓
④アクセルを吹かす
  ↓
⑤クラッチを切る
  ↓
⑥低いギアに入れる
  ↓
⑦クラッチをつなぐ

この一連の操作を「ダブルクラッチ」あるいは「ダブルクラッチを踏む」と言います。一回のシフトダウン操作に、二回クラッチを踏むため、そう呼ばれます。
ダブルクラッチでは、ニュートラルでクラッチをつないで空ぶかしをすることで、入力側の軸の回転をいったん上げてやるわけです。そうすることで、低いギアとの回転を合わせてかみ合いやすくし、歯車に負担をかけずに素早いシフトダウンを行う、というわけです。

話はそれますが、実は、変速機は入力側と出力側の歯車の回転(正確には周速度)さえ合わせれば、クラッチを踏まなくてもシフトチェンジは可能です。ワタシも昔、よく練習しました。この場合はゼロクラッチ、とでも言うのでしょうか。上手くできればダブルクラッチよりも素早いシフト操作ができますが、まあそれは別の話。

さて話を戻して、このダブルクラッチが必要になるのはどんな時か。
それは主に、強い加速を準備する時です。追越加速をする時とかもそうですが、その場合はブレーキを踏む必要はありません。最も多い場面としては、コーナーに入る前の減速時が一般的です。減速しつつ、コーナーを抜けた後でフル加速するために、あらかじめシフトダウンをしておきたいわけです。このような場面では、ブレーキを踏みながらダブルクラッチを踏む必要があります。

はい、ここまで書いて、ようやく本題に戻ってきましたね。ブレーキを踏みながらアクセルを踏む、という操作が必要になってきました。これをしたいがために、ヒールアンドトウが必要なわけです。



いやはや、思ったとおり、長い話になってしまいました。

それにしても「ヒールアンドトゥ」と言うモータージャーナリストの何と多いことか。ワタシ的調査ではそっちのほうが割合が多いような気もしています。それってどうなの?疑問を持たないの?ご自分の仕事にこだわりはないの?

まあまあ、それはそうと、どんな人でも受け入れるのがこのblogですのでね。もし「ヒールアンドトゥ」と言ってるモータージャーナリストがいても、広い心で優しく…ニヤリと笑ってあげましょう。(個人の感想です)


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