SSブログ

新潟県中越地震体験記6 [新潟県中越地震・災害]

いったん家へ帰ってくると、カミサンが戻って来ていました。
これで家族全員がそろって取りあえず安心です。
それにしても寒い。じっとしてはいられません。暗闇の中でみんなは輪になって足踏みです。
そんな中、部落に残っていた唯一の消防団員である私は、村中を走り回り、一人だけ汗だくでした。

最近の消防団は、年々団員が減ってきていて、人員不足に悩まされています。
ウチの部も同様で一部落では部を形成できなくて、四つの部落で構成されています。
部落内は大丈夫そうなので、後は残る三部落の被害状況の確認です。
他の部落なら残っている団員もいることでしょう。

消防のヘルメットをかぶり、積載車(一般的に見るような消防車です)の車庫まで自家用車を走らせます。
街灯も何もかも消えた家並みが、車のライトに浮かび上がります。
非日常的、というより異常な世界。尋常じゃない。
見慣れた景色が、オカルト映画か何かの1シーンのように見えます。
顔が強張り、背筋が寒くなってくるのは、車の暖房のききが悪いだけではないでしょう。

車庫まで来ると、他の消防団員が積載車を車庫から出すところでした。
自分一人じゃないと思うと、それだけで少し肩の荷が下りる気がします。
他の部落の人たちは、それぞれの避難場所に避難しているそうなので、受け持ちの範囲をパトロールして、まだ家に残っている人も念のために避難させようということに、話が決まりました。

ナニカヘンダ。
消防本部に連絡しようとして、何となくいつもと違う気がしていたことに、ようやく気づきました。
車載の消防無線は、常に受信状態になっています。
誰かが送話していれば、特に何もしなくても、車内のスピーカから声が聞こえるようになっています。
車のラジオでは、新潟県でかなり広範囲にわたって被害が出ていると報道されていました。
これだけの災害が発生すれば、もっとひっきりなしに無線が入るはずです。
それなのになぜか消防無線は黙り込んでいるのです。
他の消防団員にも緊張が走るのが肌で感じられました。

「六日町二分団十五部から、魚沼消防本部」
「…」
「こちら六日町二分団十五部。魚沼消防本部どうぞ」
「…」
「ウオヌマショウボウホンブ、キコエマスカ」


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

人気ブログランキングへ