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二分の一成人式によせて [育児]

二分の一成人式のお姉ちゃんからの手紙に対して、親からの手紙です。
そのまま渡すだけと思っていたら、皆さんの前で読まさせられました。
ちょっと長かったかも?





『二分の一成人式によせて』

お姉ちゃんが生まれて早いものでもう10年がたちました。
二分の一成人式ということで、お姉ちゃんが生まれた時のお話をしたいと思います。

お姉ちゃんはお父さんもお母さんも初めての赤ちゃんで、その頃は出産について何もわからず、とても不安でした。
おまけにお母さんはつわりがひどく、食べられるものと言ったらグレープフルーツくらいなものでした。
その他の食べ物はにおいをかぐだけで気持ち悪くなるので、グレープフルーツの他は水くらいしか口に入れることができなくて、お母さんはふらふらでした。

そして、つわりが収まってしばらくすると、今度は新たな心配事ができました。
普通の赤ちゃんは、生まれる時には頭を下にします。
でも赤ちゃんはいつまで待っても頭が上でした。
たまに下を向いたりもしましたがすぐに元に戻ります。
お母さんは体操をしたり、鍼やお灸をしてみたり、思いつくことはいろいろしてみたのですが、だめでした。
結局、お医者さんと相談して、手術で赤ちゃんを取り出すことになりました。

手術の日は朝からとても良い天気でした。
病院から見る空には雲ひとつありませんでした。
お母さんが手術室に入った後、お父さんとお爺ちゃんたち、お婆ちゃんたちは、ずっと廊下で待っていました。
1時間だったか1時間半くらいだったと思いますが、その時は何十時間も待っていたような気がしました。

ようやく手術室から看護士さんが出てくると「無事生まれましたよ。女の子です」と言いました。
みんなホッとしました。
でもその後お医者さんが出てきて言いました。
「生まれてから自分で呼吸を始めるまで少し時間がかかりました。念のため集中治療室に入れて様子を見ます」
自分の頬から血の気が引くのがわかりました。
普通の赤ちゃんは、生まれるとすぐ泣き声を上げます。
それによって初めて肺で呼吸をするのです。
それがうまくできなかったため、酸素が足らず、脳に影響が出る可能性がある、とお医者さんは言うのです。
みんなびっくりです。あわてて治療室に入れてもらいました。
靴を履き替え、白衣を着て、帽子をかぶり、手を洗い、恐る恐る部屋に入っていくと、赤ちゃんは透明なプラスチックケースに入っていました。
それでも、ちゃんと呼吸をして、顔色も悪くなく、静かに寝ていました。

ケースの中に入っている赤ちゃん。
ケースの横には、内側にゴム手袋の付いた穴が開いていて、そこから手を入れれば手袋越しに触ることもできます。
でも赤ちゃんの肌の感触まではわかりません。
赤ちゃんを抱き上げることも、抱きしめることもできず、匂いをかぐことすらできないのです。
お父さんは、ただ息をひそめて、じっと見つめることしかできませんでした。

お医者さんが「念のため」と言ったとおり、赤ちゃんはすぐに回復して、次の日には集中治療室から出てお母さんの元に来ることができました。
でもあの時のことを思い出すと、今でも胸がギューっと締め付けられます。

「どこが悪くてもいい。生きてだけいて欲しい」

お父さんはそう強く思いました。

命は自分だけのものではありません。
自分が生きることで、家族が、友達が、…みんなが生きる。
それぞれの命が、お互いに生かしあっている。
難しくてまだわからないかもしれませんが、お父さんはそう思っています。
自分が生まれたことでどれだけの人が喜び、安心し、希望を持ったか、それを忘れないで下さい。

二分の一成人式、おめでとう!

お父さんより



関連記事:
2010/03/02 『二分の一成人式

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GEN11

アキオさん
そっとnice!をありがとうございます。

by GEN11 (2010-03-04 19:32) 

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