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Vol.65 グッドバイ 座キューピーマジック [座キューピーマジック]

座キューピーマジック公演『Vol.65 グッドバイ』を観に行ってきました。
演目としては7年ぶりとなるそうです。

実は今回も、高校生の娘はテスト前で勉強が佳境に入り、中学生の息子は土曜日が一日部活で潰れて宿題が手付かず状態。
ばぁちゃんはこの一か月間というもの腰痛がひどくて、寝たり起きたりの毎日。
カミサンは4月から超忙しい部署に異動しており、土日もないような生活を続けています。
ヒマなのワタシだけ(汗)?
いやいや、ワタシも仕事にPTAにいろいろあるんですよぉ。

そこで例によって、子供たちは行き帰りの車の中で勉強することにし…。
カミサンは休日の仕事を次週に先送り。
ばぁちゃんには一日中寝ててもらうことで同意をもらい。
ワタシは公演当日の朝までかかって月曜の会議資料を作成してメール送信っと。
いつものことですが綱渡り的な状況でのキューピー観劇となりました。



このblogを始めたのは2004年からですが、それ以前からもキューピーマジック公演の感想文をホームページという形で公開してはいました。
後にホームページからblogへと移行する際、感想文は全てそのままblogに引っ越ししました。

昔の公演を手繰ってみるとわかるんですがこの演目は一度しか観ていなんです。
1995年の『Vol.19 グッド・バイ』ですね。
実はワタシの感想文にしては珍しく、あんまり良い感想ではありません。
そうなんです。面白くなかったんです。
その時のワタシの琴線には触れなかったというか…。
あの公演は、会場の冷房が効き過ぎて超寒かったことと、幽霊が超怖かったこと、それから、でかいカエルの上での御所河原さゆりの踊りが可愛かった…と、それくらいの印象しかありません。
物語の概要すら憶えていないんです(汗)。

元々ワタシもカミサンもドタバタ喜劇は好きなほう。
例えば「お江戸でござる」とか(古っ:笑)最近では「トットてれび」なんか大好きアル。
それなのに…。あの時は何だろう、ドタバタさ加減と、リアリティあふれる幽霊、会場の寒さ。それぞれがワタシの中でかみ合わなかったのかもしれません。
今回初めて、こんなストーリーだったんだ…とわかった次第で(滝汗)。

その後の『グッドバイ』というと、キューピーマジックが劇団からプロデュースに変わって初めての公演がちょうど『Vol.51 グッドバイ』でした。
そのタイミングで『グッドバイ』を持ってくるということは、この演目にはかなり思い入れがあるのだろうと思いましたし、みなさんお気づきかどうか…その公演から題名が『グッド・バイ』から『グッドバイ』に微妙に変わっているんです。これは怪しい!何かあるっ!
そこはぜひ観にいきたかったのですが、当時のカレンダーを巻き戻してみてみると通院や娘の運動会などで都合がつかなかったのでした。残念。

そんな往年の『グッドバイ』への宙ぶらりんな気持ちに決着をつけるべく、今回はどうしても行きたかったのです。
状況的にはかなり無理をしましたが行って観て良かったです。

例によって日曜日のマチネ。楽日楽ステです。
開場時間すぐに到着したのですが、客席はもうほとんど埋まってて最後列しか開いていないくらい、いっぱいのお客さんでした。
やはり開場30分前くらいに着いて、少し並ぶくらいじゃないとダメですか?
キューピーマジック人気恐るべし。

おっとまたまた前置きが長くなりました。
以下ネタバレあります。
ご注意ください。





前回公演『Vol.64 大きな銀杏の樹の下の小さな泉』では客入れの時からもうマスターが開店準備をしている演技が始まっていてなかなか面白かったですよね。
今回の客入れでは、受付や、チケットもぎり、会場案内など、そこかしこで幽霊たちが忙しく働いており、あの世も何かと大変じゃの〜と、到着からとても楽しめました。

そんな今回の公演。
一言で表すと「ホラーコメディ」なんでしょうけど、それだけではないような気が。…まぁそれは後で。
歌やダンスも飛び出して、ワタシなど古いファンには往年の「豆キューピッド(若手主体の実験的公演)」を彷彿とさせる公演でした。
気合いというか熱気というか、役者が楽しんでる感満載の、素晴らしい舞台でしたね。

冒頭の、女中がストーリテラーかと思わせて、まさかのイジメ(爆)?
ツカミはばっちりでしたね。
Vol.19 グッド・バイ』では、なかった場面だったような気がします。
あのくだりがなくて、いきなりベッドシーンだとチョット…ね。

そんな中で特に好きなキャラと言えばやはり御所河原さゆりでしょうか。
殺陣も格好良くて惚れ惚れしました。
御所河原さゆりは、『四人姉妹』とか、他の演目にも顔を出すこともあります。
『ルームメイト』とかにも…ってあれは別キャラでしたっけ?
ぜひ、手塚漫画でいうところの「ヒョウタンツギ」(爆)のような存在になってほしいですね。



終盤を観てて思いました。

「自分にとって、生きがいって何だろう?」

趣味がっていうほどのめりこんでいないし、子供っていうとまた生きがいとはちょっと違うような気もするし、まかり間違って仕事ってことは200%ありえない。
中には私の生きがいはコレですって断言できる人もいるでしょうが、もしかすると生きがいってのは人それぞれで定義が違うのかもしれませんね。
ワタシの場合、生きていく上での楽しみはいろいろあっても、生きがいと言えるものって改めて考えると思いつかないな、なんて考えながら観ていました。

あれだけ自分の死を認めなかった主人公が終盤で急に「生きがいなんてなかったんだ」と気づき、自分の死を受け入れるところ。
なんだかとても唐突な感じがした半面、実際そんなものなのかもしれないな?とも思いました。

閻魔大王や前妻に引きずられてということではなく、自分の足で、自分の意志であの世への階段を上がっていく。
ふと振り返り、自分の人生に「グッドバイ」と告げる、そんな最後のシーンでは胸が苦しくなりました。
自分が死に至る時には、同じように死を受け入れて、人生の終わりに納得して旅立ちたいな、そんなふう死ぬことが幸せというものなのかもしれないな、なんてことを暗転の中で考えていました。

そうそう、主人公が自分の死を受け入れる前と後。
閻魔大王の顔つきが全然違っていたのに気づきました。
それまでは自分勝手でわがままでスケベオヤジな感じだったのが、一転、好々爺っていうのか仙人というのか、閻魔大王と言うより神様仏様のような顔になってました。
ワタシの心がそう見せたのか、照明の妙技なのか、もしかしてもしかしたら演技だった(笑)?
般若のお面が演者の動きによっていろんな表情を見せるのに似て、役者っていうのはすごいな〜って改めて思いました。



今まで20年間も自分の中で不完全燃焼だった『グッドバイ』。
完全燃焼して灰になるまでやりましょう。
今回は長いです。とことん行きますよ。
ついてこれますかね(笑)?

最近子供たちも観劇に付き合うようになって、今や毎回恒例になっていること。
毎回観終わった直後にケーキ屋さんのテーブルを囲んで行う、反省会ならぬ、「キューピーマジック公演分析会議(仮)」。
あれはこういうことだろう、とか、ここはこういう意味だろう、とか、家族全員で脚本の確認。
それによって家族個々の感想が、うらづけられたり、修正されたり、さらには新しい発見があったりします。
役者さんが集まって脚本を元に役作りをする、その逆バージョン?いや観客版とも言うべき?
そんな今回の「分析会議」にて盛り上がったのは…。



「誰が犯人か」

前妻、政子の死因は、たまたま生け花にトリカブトが混じっていて、たまたまその剣山を政子が踏んでしまった、こと。
誰がどう見ても殺人でしょうコレは、というのが家族みんなの意見。
では誰が犯人か。
普通に考えて主人公、幸吉、というのが妥当なところ。
死んでほしいと願ってたと自分でも言ってましたしね。

それでは…。
その幸吉はなぜ死んだのか。
死因は明らかになっていませんが、急性アルコール中毒ではないでしょうから、おそらく心臓発作かなにか。
…ホント?

主人公の死で、得をする人物…。
今回の事件で得をするのは誰か?
それはもうダントツ「後妻」ですよね。
莫大かどうかはわかりませんが、そこそこな遺産が手に入るわけですから。
そこでワタシたち家族は「後妻犯人説」で検証を開始しました。



そもそも3ヵ月前は主人公の弟と付き合っていた。
そこで売れっ子ホラー作家で金持ちの兄のことを知り、兄と結婚したのちに殺害して遺産を相続する計画を立てる。
主人公兄弟はそれほど仲が良い様子ではなかったし、もしかすると弟もグルなのかもしれないですね。

ところで、御所河原さゆりが味方として呼び出そうとした「シロウちゃん」。
結局は出てこなかったわけですが、さて誰が怖くて出てこなかったのか。
前妻?いや、でもシロウちゃんは「大勢来るから」って言ってなかったかな。
そういえば前妻は「前からここにいた」って言ってたしな。
ということは前妻ではなさそうですね。

そもそもあの後、誰が登場したか?
そう、後妻、綾、じゃないですか。
その後を追ってチャイナドレスや閻魔大王がやってくるわけです。
でも…と、ワタシたち家族は考えました。
閻魔大王が怖いというならまだしも、チャイナドレスたちが怖いというのはどうだろう?あまり説得力がないように感じます。
それより「あの女、綾が大勢を引き連れてやってくるように、シロウちゃんには見えた」と考えたほうがスッキリします。
シロウちゃんは、よほど綾が怖かったのだ、と思います。
それは、実際に死んではいない人間なのにあの世からやってくる得体のしれないものだから、という考え方もできます。
でも実は、シロウちゃんには綾の正体が分かっていた、ということもあるかもしれません。
それほど恐ろしい女だった、ということかも。

単細胞な弟、徹を足がかりに、売れっ子作家の兄、幸吉と知り合い、徹をそそのかして幸吉を殺害。
その後、徹とよりを戻せば、遺産は我がものに。
そして二人は北海道で、時効が確定するまで身を隠す。
最終的には徹を猟銃で撃ち殺すなりしてしまえば…。

そこまで行ったら、もしかしたらもしかして。
前妻、政子を殺したのは…?
すごいですね。そこまで計画的だったとは。
綾、恐ろしい子(白目)。


公演の中であまり意味を持たないように見えたシロウちゃんのくだりが、そんなふうに考えると、あるメッセージを持っていたように感じます。

幽霊より怖いもの。それは「人間」。



う〜む、深い。深いな〜。
ということで、この『グッドバイ』という脚本。
ウチの家族の中では、ホラーコメディーではなく、なんと「犯人探し」の「ミステリー」という分類に落ち着きました(笑)。
皆さんはいかがでしたか?

vol65goodbye.jpg


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