SSブログ

Vol.74 ルームメイト 座キューピーマジック(追記あり) [座キューピーマジック]

座キューピーマジック公演『Vol.74 ルームメイト』を観てきました。
今回も前回に続いてみんなの予定がついたため、カミサンと子供たちと、フルメンバーでの観劇となりました。

今回は、東京で一人暮らしの娘のアパートまでは車。
そこで娘と合流し、都内は電車移動ということにしました。
そのほうが時間が読めて早いのでね。

久しぶりの都内の電車。
コロナ以前はたまに本社出張などで電車を使うことはありましたが、あれからもう何年経ったんだろう。
思い出せないほど昔のことのようです。
田舎暮らしでのドアtoドアの生活に慣れた人間には、都会の電車移動は苦痛ですね。
駅での乗り換えに歩く距離ですら、田舎なら車を使いますもん(笑)。

そんなこんなで、事前に予定したスケジュールに従って、何事もなく予定通りに下北沢の地に立つことができました。


この「ルームメイト」という演目。
前回は6年前。『豆Vol.10 ルームメイト』でした。
豆キューピッド(以後豆公演)っていうのは、本公演とは違い、若手を主体にした公演で、団員の脚本だったり演出だったり、はたまたその昔は歌や踊りまで繰り出す、実験的公演のことを言います。
とはいえ、ここ20年ほど前からの豆公演は、ほとんど本公演と言っても良いほどの高い完成度を観せてくれるようになっています。

前回のルームメイトも御多分に洩れず、かなり楽しめた公演だったことを憶えています。
が、当時主役を演じていた女優さんお二人としては不完全燃焼だったようで、今回改めてリベンジしたいという希望があり、本公演として「ルームメイト」を演目とした、ということだそうです。
6年も前の公演のリベンジ。
すごいこだわりですね。

例によって土曜日のマチネ。
今回も主役がダブルキャストでしたが、たまたま前回の主演女優と同じ配役のBパターン回。
楽しみ倍増です。

前置きはこれくらいにして。
以下ネタバレあります。
ご注意ください。



もともとこの「ルームメイト」という演目は、個人的にも非常に好きな演目で(いや別にキューピーマジックに嫌いな演目などないのですが)。
それだけでワクワクが止まらない、な気持ちで客席に座りました。

勝手知ったる物語。
と思っていたところ、かなりリライトが入ったことと、演出が大きく変わった?のか、冒頭から「あれ?別物?」という印象を受けました。
以前の「平成なルームメイト」から「令和のルームメイト」に模様替えしたような感じ。
でも、嫌な感じも違和感もなく、これはこれで「新しいルームメイト」としてすごく自然に入り込み、楽しむことができました。

印象が違った理由の一つとして。
まず前半のコメディ色が強くなった気がしました。
以前はもっと息詰まった感じ、鬱々とした感じが、冒頭から漂ってたように思います。
それに対して、明るく、軽くなった印象を受けました。

そしてもう一つ。
主役のウエイト配分が大きく違く観えたんですよね。
前のルームメイトでは、亜由美と葉子(役名は違ったかもしんない)の二人が、二人とも同レベルで主役、といった感覚を憶えていたのですが、今回は亜由美の方が7〜8割がた主役配分が高いように観えました。
亜由美の方が主役で、葉子は強いて言えば準主役、といった感じでしょうか。

もう冒頭しょっぱなから「これ前と違うぞ?」と思えて、思わずちょっと座り直しました。

そんな感じで、新しい演目、新解釈ルームメイト。
言ってみれば「シン・ルームメイト」。
今回の観劇は、そんな新鮮な気持ちで楽しめました。


とは言え、物語としては大きくは変わっていません。
亜由美の苦しみ、絶望感、そして無力感。
それに対する、葉子のどこまでも優しい笑顔。
この対比が、もう、ぐいぐい来ます。
崖っぷち?土俵際?まで、ぐいぐい押されてしまう感じ。
同じ毎日がこれでもかこれでもか、と繰り返され、亜由美と一緒に自分の胸が押しつぶされるようでした。
前半のライトな感じが、打って変わってこの後半に大きく効いてきます。
すごく練られた演出だったんですね。


この「ルームメイト」という演目。
今回改めて違う方向から観た気がして、今までと違う切り口が見えました。
それはいみじくもワタシの心の師匠、御所河原さゆり先生がおっしゃった言葉。

「元には戻れないが先に進むことはできる」
「もう一度、覚悟を決めて飛び降りるのじゃ」

この台詞を聴いてハッとしました。
今まで60年間生きてきて、失敗したこと、上手くいかなかったことが、数限りなくありました。
何度やっても、何度やっても、上手くいかない。

「なぜ上手くいかないのか」

それはその都度、人のせいにしたり、時代のせいにしたり、周りのせいにしてきたような気がします。
そんな甘えた記憶に、御所河原さゆり先生にビシッと言われた気がしました。

「覚悟」

その「なぜ」の答えは、今考えると「覚悟」だったように思います。
覚悟のない努力、覚悟のない挑戦には、結果はついてこない。
確かに、今までの数多くの失敗、そこに「本当の覚悟」はあったのか?
思いがけず、人生の極意?を突きつけられたような気がしました。

…いや、60年も生きてきて、今更言われても(汗)。
そんな言い訳は、御所河原さゆり先生には通用しません。
はい、わかりました。
今後何年生きられるかわかりませんが、残りの人生、「覚悟」を持って生きていきます。
おそらく物語とは全く違った、的外れの感想だとは思います。
とは言え、今までの「ルームメイト」からは絶対になかったであろう、この気づき。
ここにあえて書き残して、これからもずっと大切にしていこうと思います。


さて観劇終わってからの家族そろっての振り返りの会。
帰りに喫茶店に寄って、家族それぞれ感じたことを語り、疑問点をみんなで解消する会です。

「語彙力ないけれども」

今年19歳になった準成人w。
息子の言うには。
登場人物、みんなの気持ちが、それぞれ一方通行なことに、凄いなと思ったそうです。

自分が一番思いを持つ相手。亜由美は当然、葉子です。
葉子は亜由美か?というとそうでもない。自身のセリフにもあったし、自分の悩みを亜由美に打ち明けないこと、などから、本当に思いの強い相手とは、不倫相手なのだろうと。
では不倫相手はどうか?というと。サリナの病気を知って葉子と別れる件があり、サリナかと思わせますが、もしかすると「愛娘を大事にする自分スゲー」的なナルシストなのかも知れず。と考えると大事にしている相手というのは、案外自分なのではないか。
サリナもその母親も当然、不倫をしてた父親。
妹真由美は当然、姉亜由美を思っているし。
タマコは最後に、葉子のことを実妹に重ねていることがわかり。

どこにも思う相手への矢印が相対していない。すべてが片想いで形作られている物語。
それがすごい、と息子は言います。
息子的には、亜由美の葉子への感情について、愛情(LGBTのL)があると言っていましたが、ワタシも含め、他の家族はその件については少し懐疑的。
一か月も毎日毎日目の前で飛び降りるのを見せつけられて、精神的に追い詰められていることも、かなりな部分あるのではないか、他の家族はそういう感想でした。
厨二を自称する本人、そこはある程度偏った見方だとは意識しているようですが。


さて、圧巻はそこから。
息子曰く。

「幽霊たちも含めて、みんながルームメイトだという、そこも凄いね」

ワタシもみんなも「おーっ!」思わず感嘆の声を上げました。
そこまでは気づかなかったわー。
オマエ、ナニモノ?
お前も充分凄いよ!


もしかして、ウチの子供たちの感性を育て育んでいるのは、親でも何でもなく、キューピーマジックの観劇なのではないか?
うーん、確かに、学校の勉強よりも、キューピーマジックの公演の方が、人生のためになる、のかもしれません。
座キューピーマジック、宗教法人化したほうがいいかもね。

皆さんはいかがでしたか?

vol74.png



2022年3月10日追記:

いまさらですが書き忘れてたことがありました。
ま、わかっている方はわかっていたとは思いますが。

今回2022年10月公演の『Vol.74 ルームメイト』のチラシ絵と、直近の同じ演目2016年11月『豆Vol.10 ルームメイト』のハガキ絵の構図が同じなんです。

qp20161120.png
『豆Vol.10 ルームメイト』


観劇後の振り返りの会で話題になったのに、記事に書くのをすっかり忘れていました。
前回のリベンジ、という意気込みが、ここにも表れているんですね。
すごいなー。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

人気ブログランキングへ